アメリカの医療費が高いという話、よく耳にしますよね。
特に歯医者に行くとなると、「一体いくらかかるんだろう?」と不安になる方も多いのではないでしょうか。私もその一人でした。「Cavity(虫歯)」と聞くだけで、治療費のことが頭をよぎります。
実際にアメリカで歯科治療を受けた経験を基に、治療費の実態や歯科保険の仕組みについて詳しくお伝えします。
- アメリカの歯科保険の基本的な仕組み
- 主要な歯科用語の意味
- 歯科治療費を抑えるための実践的なアドバイス
アメリカの歯科保険の仕組み
アメリカの歯科保険を理解するためには、はじめに用語を理解しなければいけません。実際に自分が使うようになるまで、正直私も理解していないことがたくさんありました。
歯科保険に関する大事な用語
PPO(Preferred Provider Organization)
- 提携している医療機関(ネットワークと呼ばれる)での治療を受けると、費用が安くなる保険プラン。自由に医師を選べるが、提携外の医師を利用すると自己負担が大きくなる。
DPO(Dental Preferred Organization)
- PPOと似ているが、歯科専門のネットワークに特化したもの。提携医療機関での治療が割引される。
In-network(インネットワーク)
- 保険会社が提携している医療機関や専門医。ここでの治療は通常、コストが低く抑えられる。
Out-of-network(アウトオブネットワーク)
- 保険会社の提携外の医療機関。ここで治療を受けると、費用が高くなる可能性がある。
Coverage(カバレッジ)
- 保険が適用/カバーされる範囲や内容。
- アメリカでは、保険が適用されることを「保険がカバーする」という表現でよく使われます。日本ではあまり馴染みがないかもしれません。
「カバー」というのは、保険が「負担する」や「支払う」という意味です。
Co-pay(コーペイ)
- 診察や治療ごとに支払う固定料金。
Deductible (自己控除額)
- 保険が適用される前に自己負担する必要がある金額。
多くの歯科保険プランでは、予防ケア(定期健診やクリーニング)は自己控除額に関係なく、全額カバーされることが多いです。
*具体的な例は、こちらをご確認ください。
Annual Maximum(年間最大限度額)
- 保険が1年間に支払う治療費の上限額。この金額を超える治療費は、保険が支払わず、自己負担となる。
*具体的な例は、こちらをご確認ください。
Waiting Period(待機期間)
- 保険に加入してから、特定の治療がカバーされるまでの期間。特に大きな治療に関しては待機期間が設定されていることがある。
例)ある保険プランに加入したとき、インプラント治療のための待機期間が6ヶ月と設定されている場合、加入後の6ヶ月間はインプラントに関する治療費が保険でカバーされず、全額自己負担となります。
Preventive Care(予防ケア)
- 虫歯や歯周病を防ぐための定期検診やクリーニング。多くの保険プランでは、予防ケアは全額カバーされることが多い。保険によって、年間に2回まで、または3回までと回数は異なる。
Cavity(虫歯)
Root Canal(根管治療)
- 歯の神経や血管が通っている管(根管)を治療すること。虫歯が進行して歯髄(神経)が感染した場合に行われる治療法。
Crown(クラウン)
- 日本語で「クラウン」または「冠」と呼ばれ、歯の上に被せる人工のかぶせ物のこと。
クラウンは、金属、セラミック、レジンなどの材料で作られ、患者の歯の色や形に合わせてカスタマイズされる。
Orthodontics(矯正治療)
- 矯正器具やブレースに関連する治療。プランによってはカバーされない場合もある。
Annual Maximum(年間最大限度額)についての例
歯科保険プランは、内容によって異なりますが、多くの場合「年間最大限度額」が設けられています。
年間最大限度額とは、保険が1年間に支払う治療費の上限額のことで、この金額を超える治療費は、保険が支払わず、自己負担となります。
多くの保険はカレンダー年(1月から12月)が給付期間として設けられています。言い換えると、毎年1月1日にリセットされます。
年間最大限度額が$2,000であると仮定して計算をした、下記の例をご参照ください。
5月の時点で保険残高が$160しか残っていないため、10月の治療時に自己負担額が増えることになります。
*保険会社、プランによって年間最大限度額や保険カバー率は異なるため、各自保険の詳細をご確認ください。
*1月は、自己控除額の$100が引かれているため、保険の支払額は$80のみとなっています。
月 | 治療 | 治療費 | 保険 カバー率 | 個人 負担額 | 保険 支払い額 | 保険残高 |
---|---|---|---|---|---|---|
1月 | 虫歯治療 | $200 | 80% | $120 | $80 | $1,920 |
3月 | 根管治療 | $1,700 | 80% | $340 | $1,360 | $560 |
5月 | クラウン | $800 | 50% | $400 | $400 | $160 |
10月 | クラウン | $800 | 50% | $640 | $160 | $0 |
合計額 | $3,500 | $1,500 | $2,000 |
Deductible(自己控除額)についての例
Deductible(自己控除額)とは、保険が適用される前に負担する必要がある金額のことをさします。
こちらの2つのシナリオを例にしてみましょう。自己負担額はいくらになるのでしょうか。
Dental Expenses(治療費) | Deductible (自己負担額) | Annual Maximum (年間最大限度額) | |
---|---|---|---|
シナリオ① | $2,000 | $200 | $1,500 |
シナリオ② | $1,350 | $200 | $1,500 |
シナリオ①
- Deductible(自己控除額)の$200を支払う。
- 残りの金額は$1,800になる。($2,000 – $200)
- あなたの保険がAnnual Maximum (年間最大限度額)の$1,500までカバーする。
$1,800 – $1,500 = $300
$300は自己負担となる。 - あなたの支払額は、合計$500。(Deductible $200 + 保険がカバーしない$300)
シナリオ②
- Deductible(自己控除額)の$200を支払う。
- 残りの金額は$1,150になる。($1,350 – $200)
- あなたの保険がAnnual Maximum (年間最大限度額)の$1,500までカバーする。
残りの$1,150が保険適用となる。 - あなたの支払額は、合計$200。(Deductible $200のみ)
アメリカの歯科保険
アメリカにはいくつかの主要な歯科保険会社があります。
アメリカの主要な歯科保険会社
- Delta Dental (デルタ・デンタル)
アメリカ最大級の歯科保険会社で、全米50州でサービスを提供。 - Cigna Dental(シグナ・デンタル)
個人向けや家族向けのプランで知られており、広範な歯科医のネットワークがある。 - Aetna Dental(エトナ・デンタル)
個人、家族、雇用者提供型プランを提供しており、CVSヘルスグループの一部。 - Guardian Dental(ガーディアン・デンタル)
個人および雇用者提供型のプランを提供しており、ネットワークカバーのオプションも多岐にわたる。
歯科保険プランで気を付けること
多くの企業では、従業員に歯科保険を提供しており、PPOやHMOなどのプランから選択できます。ただし、どのプランが利用可能かは会社の保険制度によって異なります。
PPOやHMOなどのプランの違いを理解し、自分に最適なものを選ぶことが大切です。また、プランの選択は通常、年に一度のOpen Enrollment (オープンエンロールメント)期間に行われるため、この期間を逃さないよう注意が必要です。
あなたが加入している歯科保険が、どの歯医者でも使えるというわけでないので、気を付ける必要があります。
- PPO(Preferred Provider Organization)
- 提携する歯科医のネットワークがあり、ネットワーク内の医者を利用することで自己負担が少なくなります。自由に医者を選べるが、ネットワーク外の場合はコストが高くなることが多いです。
- DHMO(Dental Health Maintenance Organization)
- PPOと似ていますが、このプランでは、ネットワーク内の歯科医のみを利用でき、ネットワーク外の治療は通常カバーされません。
- HMO(Health Maintenance Organization)
- 限定されたネットワーク内の歯科医を利用しなければならず、選択肢が少ない代わりに保険料が低いのが特徴です。紹介が必要な場合もあります。
歯科保険がカバーする歯科治療費
保険会社、また保険のプランによって異なりますが、一般的な治療の種類ごとの平均的なカバー率は次の通りです。
- 予防ケア(例:クリーニング、定期検診、X線など): 通常100%カバー
- 基本的な治療(例:虫歯治療、根管治療、簡単な抜歯など): 70%~80%
- 主要な処置(例:クラウン、ブリッジ、義歯、インプラントなど) : 50%~70%
- 矯正治療 : 保険適応外が多いが、適応される場合は50%程度
歯科治療費をおさえるためのアドバイス
アメリカで歯科治療に多額の金額をかけないためには、予防ケアが非常に重要です。オーラルケアを行うことで、虫歯や歯周病を未然に防ぎ、将来的な高額治療を避けることができます。
私自身、アメリカへ来てから電動歯ブラシの使用と毎日フロスをすることを勧められました。両方を始めてから、幸いにも大きな虫歯や治療の必要はありませんでしたが、日本で治療した歯が欠けたり、クラウンが取れたりすることが増えてきたため、再治療が必要になっており、予防ケアの重要性を実感しています。
予防ケアとして勧められること
- 定期的な歯科検診: 年に2回程度の歯科医の定期健診を受けましょう。
- 適切なブラッシング: 毎日のブラッシングは基本です。正しいブラッシング技術を心がけましょう。
- デンタルフロスの使用: 歯と歯の間に残ったプラークを取り除くために、デンタルフロスを使うこと。初めてフロスを使う場合は、歯茎が少し出血することもありますが、これは通常一時的なものです。続けることで、歯茎が健康に保たれるようになります。
フロスは、ホルダータイプ、ロールタイプなど様々な種類があります。
ウォーターフロスも使いやすさから人気があります。 - 食生活の見直し: 甘いものや酸性の飲食物を控え、バランスの取れた食事を心がけましょう。
- 口腔ケア製品の利用: 抗菌性のマウスウォッシュや、歯磨き粉を使用することで、口腔内の健康を保つことができます。
電動歯ブラシ
電動歯ブラシは、大人にも子どもにも多くのメリットがあります。
- 優れたプラーク除去: 研究によると、電動歯ブラシは手動ブラシよりもプラークを効果的に除去し、歯肉炎を軽減することができます。
- 内蔵タイマー: 多くの電動歯ブラシには、推奨される2分間のブラッシングを促すタイマーが搭載されています。
- 子どもが使う時に、この2分間のタイマーがとても役に立っています!
- 一定の圧力: 一部のモデルには圧力センサーが付いており、強く磨きすぎることを防ぎ、歯茎のダメージを軽減します。
- 多様なモード: 感度の高い歯、歯茎ケア、美白など、さまざまなニーズに応じたモードが用意されています。
- 使用の簡便さ: 力をあまり使わずに操作できるため、手先の不自由な方にも適しています。
アメリカで人気の電動歯ブラシ ブランドとタイプ
PHILIPS Sonicare 4100 Power Toothbrush
プラーク除去力: 手動歯ブラシに比べて最大7倍のプラークを除去。
バッテリーインジケーター: バッテリーの状態を示すライト付き。
圧力センサー: 2段階の強度設定で歯茎の過剰ブラッシングから保護。
スマートタイマー: 2分間のタイマー付き。
ブラシヘッド交換リマインダー: ブラシヘッドの交換時期を知らせる。
長持ちバッテリー: 1回の充電で約2週間使用可能。
Oral-B Pro 1000 Rechargeable Electric Toothbrush
プラーク除去力: 手動歯ブラシに比べて、歯茎ライン沿いのプラークを最大100%除去。
歯茎の保護: センシティブクリーニングモードと歯茎圧力コントロール機能で、強くブラシをかけると自動的に振動を停止。
クリーニングモード: 3つの簡単に使用できるクリーニングモード。
個別のニーズに対応: お好みに応じたOral-Bのブラシヘッドが購入可能で、深層クリーニング、優しいクリーニング、ホワイトニングなどに対応。
ラウンドブラシヘッド: 四角い手動ブラシが届かないところまでしっかりと届く。
Quip Sonic Toothbrush for Adults
ガイド付きブラッシング技術: 2分間のタイマーと30秒ごとのパルス機能。
タイムドソニック振動: ソフトなブラシ毛が敏感な歯や歯茎を優しくクリーンにし、効果的で安全な電動歯ブラシ。
バッテリー: バッテリーは最大3ヶ月持続(1日2回、各2分使用)。
スリムで持ち運びに便利: 大きな充電器やスタンドが不要で、旅行に最適。
Quip Sonic Toothbrush for Kids:子ども用もある。
FSA (Flexible Spending Account) の活用
FSA (Flexible Spending Account)は、特定の自己負担医療費を支払うためにお金を入れる特別なアカウントです。FSAに拠出するお金は給与税の対象外であるため、設定した金額に対する税金を節約できます。
通常、雇用主のオープンエンロールメント期間中にFSAに拠出する金額を決定し、その金額は年間を通じて給与から均等に控除されます。その後、これらの資金を使って、処方薬、医師の診察、さらには一部の市販薬などの対象となる医療費を支払うことができます。
あなた、または家族の方の会社でFSAが提供されているかどうか、確認をしてみると良いです。
アメリカの歯医者事情 まとめ
アメリカの歯医者での治療費が高いというのは、アメリカに住む私たちにとって実感しやすい現実ですよね。
しかし、歯科保険の仕組みをしっかり理解することで、少しでも不安を和らげることができるかもしれません。保険が支払う年間最大限度額や、各治療に対する保険の適用割合を把握すれば、心に余裕を持って治療に臨むことができるはずです。
さらに、予防ケアも大切です。定期健診を受けたり、電動歯ブラシやフロスを使うことで、歯の健康を保つことができ、治療が必要になるリスクを減らす、すなわち歯科治療にかかる費用を減らすことも可能です。
ご自身の歯科保険の内容を確認して、安心して治療を受けられるようにしていきましょう。あなたの歯の健康を守るための大切なステップです。